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2023群馬県みなかみ町のラフティング事故について

まず、この度の事故に遭われた方とご家族の皆様に、心からお悔やみ申し上げます。

 

コマーシャルラフティング中での事故となってしまい、とても残念です。

保津川のライン下り事故からそう月日が経っていないこともあり、世間の関心と衝撃は大きなものでした。

「ライフジャケットを着ていなかった」「ライフジャケットの装着が甘かった」「わざとひっくり返した」など・・・なかなか正確な情報も無く憶測が飛び交っている状況です。

私もラフティングガイド、カンパニーの代表をしている身として感じていることなど書いていきたいと思います。

 

この事故で広く、ラフティングは命が脅かされるような危険なスポーツ、アクティビティであると認識されてしまいました。過去30年間、日本中のラフティングカンパニーが積み上げてきた信頼を失わせた事故会社の責任はとても大きいと思います。

この事故を受け、多くの方からラフティングの危険性についての懸念と心配の声をいただいております。

 

先に私が知りうる限りの事故状況を書ける範囲で書いていこうと思います。

川の水量は、今時期の平均でした。しかし、春先の利根川は特別です。

雪解けの水が川に流れ込むので水量は夏時期より遥かに多く、水温も非常に冷たいので、一般人なら5分も浸かれば動けなくなります。

ツアー後半にある諏訪峡、竜ヶ瀬という非常に難易度の高い急流でボートが転覆し、投げ出された人たちはその先にあるフリッパーという急流まで流れていきました。フリッパーまでは2分ほどで流れていきます。

何人かは先行していたボートに助けられています。

フリッパーは左カーブの急流になっており、カーブ外側の岩に胴体ほどの丸太がはまって沈んでいたのです。

ツアーで使うコース内の危険物は、発見次第速やかに、みなかみの全ガイドへ報告が来るようになっていますが、この丸太は沈んでいたため、どのカンパニーも認識していませんでした。

とは言え、川のカーブ外側は往々にして、危険なものが沈んでいたり引っかかっていることが多いので、フリッパーの右は危険な場所と言う認識は全てのガイドにあるはずです。

流れたうちの一人が不運にも、その丸太に身体がくの字のようにして引っかかりました。

ライフジャケットは流水の圧力(動水圧)で脱がされてしまいました。

流速と同じ速度で流れているのなら、ライフジャケットさえ着ていれば浮いていられます。しかし何かに引っかかるなどして止まってしまうと、動水圧が体にのしかかってきます。これは見た目に大した流れでなくとも、かなり大きな力になります。春先の利根川であったなら、例えライフジャケットをしっかり閉めていても、簡単に脱げてしまうでしょうし、そもそもあのクラスの急流で何かに引っ掛かったのなら、誰であれ助かるのは難しいでしょう。

そのため川に投げ出され、流れるときには足が下がらないように体をなるべく平らにし、下流に足を向けて流れることが重要であり、参加者へはその説明を一番大切なこととして伝えます。

 

今回の事故の経緯や細かな原因はさらに明らかになっていくでしょうが、まずそもそも春先のみなかみ町でのラフティングは他の河川に比べ、リスクマネジメントが非常に難しい川です。

そのため、みなかみのガイドには高い技術と知識、経験、リスクマネジメント力が求められています。

竜ヶ瀬での転覆は毎年何度も起こってます。これは事故ではなく激流でのラフティングとはそう言うものであり、「事故が起こるならここだろうな」とガイドなら皆わかっているので、フリッパーまでに全員をレスキューするためのトレーニングを必ずやっているはずです。

しかし、どんなに高い意識を持って取り組んだところで、自然はいつでも無慈悲なのも確かです。

利根川ツアーのコース内で唯一事故現場は、ガイドですら泳がない場所であり、ガイドが泳げない、泳ぎたくない場所というのは許容できない大きなリスクがあるということです。

 

事故会社がどこまでツアーのリスク管理をしながら、どれほどのトレーニングを積んでいたのかはわかりませんので言及できませんが、社長は責任ある者として遺族の方へ真摯に対応してくれることを願ってます。

また、他の河川では普通に営業しているので、どのように再発防止や事後対応に努めるのかを業界各社は注視しています。

現時点で何の説明もなく、情報開示もしていません。

ホームページ上ではみなかみラフティングだけが消えて(他に5河川で営業)あたかも最初から営業していなかったかのように見え、また堂々と「安心、安全」を謳っています。

安心、安全であるかは事故原因がはっきりした後に会社側に過失がなかったと確認できるまでは消費者へ提示すべきでないと思います。

 

私自身は、みなかみでのガイド経験を10年積んできました。

水の多い時期は毎日早朝からのトレーニングに取り組んできましたが、事故への不安は常に存在しました。その不安を解消するため、日々川に出てトレーニングしました。不安と同時に毎日でも川を下る魅力が利根川には確かにあります。

 

リスクの高い川でのアクティビティの是非については、それぞれの意見があるでしょう。しかし、それでもみなかみ町のラフティングが過去30年間大きな事故がなかったのは、各カンパニーとガイド達が日々努力してきた結果です。これは簡単ではありません。各ガイドのレベルがいかに高いかを物語っていると思います。

ですので今回の事故は非常に悲しくショックが大きく、また改めて自然の無慈悲さを感じずにはいられません。

 

私はみなかみでのラフティング経験から川の怖さを学びました。

川の何が、どんなところが危険なのかを肌で感じてきました。

 

リバージョイを立ち上げるにあたり、リスクコントロールのしやすい川を厳選することから始めました。

私たちのコンセプトは、世代を問わず皆が自然と触れ合い、楽しむことです。そのために、徹底的なリスクコントロールに取り組んでいます。

毎年、利用するコース全ての水中動画撮影を行い、安全点検を徹底しています。

ツアーで使用する前には、ガイドが先に泳ぎます。

増水などで安全が確保できない場合は、即座に中止となります。そのため、リバージョイのツアーは比較的中止率が高くなってしまいます。

 

私たちは、「自然とのアクティビティに絶対の安全はない」ということを理解しています。そのため、安全管理とトレーニングに常に励み続けます。

しかしながら、ゲストの皆様のご協力なくして安全なツアー開催はできません。ゲストの皆様のご理解とご協力に心より感謝申し上げます。

私たちリバージョイは、自然と向き合い、ゲストの皆様の思い出に残るような素晴らしい体験を提供することを使命とし、活動していきます。

リバージョイ代表 池邉祐介より、改めて皆様にお願い申し上げます。 2023.5.10 池邉祐介

 

一部加筆2023.7.5